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映像コミュニケーションの落とし穴(2003/03/04)
キーボードを使わなくてもインターネットでコミュニケーションがとれるようになる。NetMeetingといって、簡単なカメラ(7,800円程度)を購入してからパソコンに接続して、MicrosoftのサイトからNetMeetingのツールを無料でダウンロードすればインターネットを介してテレビ電話ができるようになる。当然キーボードでパチパチ打ってメールを送信なんてめんどくさいことをしなくとも、カメラに向かって話せばそれで用件は相手に伝わるのだ。だからキーボードはいらないことにある。先輩方におかれては「ほう、やっとそういう便利な技術がお目見えしたのか、これでひと安心、わずらわしいことに悩まされることはなくなる。よかったよかった・・・」と思うだろうが、どっこいこれには落とし穴がある。
試しにご家庭の押入れに転がっているビデオカメラのバッテリーを充電してから、録画モードにして立ち上げ、ご自身そのカメラのレンズの前に立って、何かをしゃべってみるとわかる。
しゃべれないのである。
口をへの字にまげて、立ち尽くすのが関の山だ。僕の場合なんぞは仁王立ちになったまま右の眉毛を上げて、左の眉毛を下げる。その反対を試みる。その繰り返し。やがて飽きると、定番のあっかんべーをして、シェーをする。それでも5分もたない。困るので「うーやーたー」をする(*注 1960年代に流行った、少年ジェットの決め技、腰に手をあて、もう片方の手を前に出してから、山で山彦を呼ぶようなポーズで“うーやーたー”と下腹に力を入れて叫ぶ、と悪漢ブラックデビルはひるんで逃げる)。
それでも2分もたないので今度は最後の手段、カラオケで鍛えた「LOVEマシーン(モーニング娘。)」のさわりをうろ覚えでやっちゃう・・・。
このへんで録画停止で巻き戻して再生してみる。もちろんたった一人でやってるからこそ、こんな恥ずかしいことをやってのけている。再生したビデオを1分も見ないうちに、即巻き戻して録画にして録画ファイルは未来永劫、永久不変に抹殺することになる。
つまり人間は、特に社会人だと思い込んでいるおじさんとかはカメラを向けられると何もできなくなるのである。金太郎飴教育を受け、会社ではなにもしないのがエリートと叩き込まれてきた筋金入りは、カメラを向けられた時点でただのはにかみ屋さんにしかすぎなくなるのだ。
ということはNetmeetingというテレビ電話なる世界が到来した暁には、中堅ビジネスマンはおろか若者だろうとなんだろうと日本の教育を受けてきた連中はすべてただのはにかみ屋さんになるだけの話なのだ。
すると今度は「いやー、なんかこうキーボード打てなくてねぇ」とインターネットスキルのせいにできなくなるわけだ。これまたもっとマズイことになるという新たなる多難の幕あけとなるわけだ。きっと新聞は「自己を持たない日本人ここにきて、インターネットの軍門にくだる」とか「自分の考えを出せないビジネスマン、ますますリストラの嵐」とか書き立てるんだろう。
「おじさんパワーをなめんじゃねえーぞ!かくなる上は芸を磨くしかない」とカラオケ通いにせっせせっせ足を運ぶか、「俺の決め手文句はコレというように、今のうちから名言格言集をひろってかっこいい台詞とポーズを練習しておく必要がありそうだ。

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