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# 021:企業力チェックはホームページを調べてみる (2004/01/27)
ある某銀行役員が飲もう、と行き付けのジャズバーでバーボンをやっているとこんな話になった。来年にかけて銀行による企業の債権放棄策を実行するというのだ。債権放棄とは文字通り「借金を返さなくてもいい、つまりチャラにする」という意味だが、銀行の狙うそれはちょっと意味が違う。 「借金はチャラにしてあげるから身軽になって、一から出直しませんか、わが銀行と・・・」という優良企業への提案をするという意味なのだ。
「銀行というのは資金を貸し出して、相手が儲けてその利子分を含めて返済してもらうことで成り立つ金貸し業で、相手企業がとにかく儲かってくれなきゃこっちも御陀仏になるわけ。しかし98%が中小企業で構成される日本企業構造にあって、地方を含む全国約60万社におよぶ企業全部がデフレスパイラルの引力から脱出できるとはとうてい考えられない。良くて20%〜17%しか生き残る企業数は見こめないのではないか」という。つまり企業全部を銀行の対象とする考えを捨て、優秀な企業のみを選択してそれ以外は切り捨てるというのだ。
「いよいよそうしないとこっちももたない。不良債権はあるがまだまだ実力とやる気のある企業はある。そこと腹を割って話し合い資金貸し出し、企業および人材紹介、経営戦略サポートなどビジネスコンサルすることでこのデフレスパイラルを切り抜ける作戦にでる」のだそうだ。「他は見捨てるというよりも、こちらからはもう何もしない。そもそもそういう会社は企業努力もしなかった、IT化や知恵の創出などさんざんアドバイスしても馬の耳に念仏だった」と三行半を下す。「問題はどの企業が将来性があるか? を算定する基準をどうするかにある」
そんな話しを聞かされてからやおら担当者は僕にこう切り出した「企業チェックマニュアルの作成を手伝ってくれませんか。期限は今年の11月から来年4月、判断基準とマニュアルは銀行員が判定するまでの資料つくりと考えてくれればいい。企業へのインタビューは少なめに水面下で事前調査をした段階で確実にその企業の将来的可能性を判断できるような仕組みを作って欲しい」という難題だった。
そこで提案した事はまずは企業審査の定番1・2だ。 1) キャッシュフローチェック: 現金を対象にその支出と収入内容をチェックする。収益となった毎月の現金明細をから企業が何を売る事ができるかを確認する。また支出した現金の明細からは経費やコストなど費用対効果、収益率を割り出す。つまり現在儲かっている会社は第一関門合格ということである。 2)企画力: その企業リーダーの将来展望をチェックする。いわゆる企画書を吟味するが、特にコアコンピタンス(企業の独自性、強み)を生かしているか、近未来の消費行動や価値観の変化、市場変化を読み取っているか、業界の再編成、業務変換、IT実用導入などを実利を前提として準備計画があるか・・・等をチェックする。
ここまでは、銀行のお得意様再建マニュアルにあるようなお決まりごとだが、僕が提案したのは『自社ホームページチェック』だ。 「企業側に知られずに事前チェックできるしくみが欲しい」という条件がある以上、キャッシュフローは銀行の特権でできても企画力はインタビューしなければわからない。しかし自社ホームページはIR(決算書)と社長の経営展望を載せるのがいまや常識となりつつある。もしその企業がいまだ未完成なのであれば、作るようアドバイスをしてこちらの協力体制を受け入れるかどうかをチェックすればいい。
3) 企業チェックの秘策は以下の『自社ホームページ閻魔帳』にある ・自社ホームページがないならIT化が進んでいない事を意味するから没。 ・IRが記載されていないなら実体のないでっちあげ企業と同じことになる。公開されていれば税務署が閲覧しているので嘘はつけない。企業が実在しているがIRがないなら、なんらかの表ざたに出来ない経理状況だということで没。 ・社長の企業展望がなければ企画力不足で将来性評価はできない。「わが社は一丸となって…」とコブシをあげていても、具体的な企画内容と目標年月日がなければ投資対効果を見こめないため没。社長名や役員名が明記されていなければ責任の所在がないので没となる。
以上、いよいよ閻魔様のお出ましとなるか、七福神のご到来となるか中小企業の真価が問われる年末がやってくる。

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